『君だけのために』

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中学校3年間、音楽の授業や合唱祭、卒業式…いつもいつもピアノを弾いていた。 2年生の合唱祭の時に弾いた"野生の馬"の伴奏は「歌が聴こえなくてピアノの発表会みたいだった」とみんなから笑われた。 『ピアノの人』というのは、その時に誰かがつけた私のあだ名だ。 正直、一度くらいはみんなと歌ってみたかった。本当は、ピアノよりも歌が好きだから。 そんな事、言い出せる様な性格じゃないんだけれど…。 長屋君からの依頼内容は簡単に言うと〈譜面起こし〉だった。ただの譜面起こしなら、今時無料のアプリでいくらでもやりようがある。 だが、しかし…長屋君が作った歌は歌詞と一部の曲だけが何となく出来ている未完成の状態らしい。 どうやら〈作曲の補助〉もする事になりそうだ。
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