『君だけのために』

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パイプ椅子を両腕に一つずつかけて早足で階段を上がる。 少しでも早く生徒会室に着きたい。 後ろから長屋君のパイプ椅子の音がついて来る。 「明日でいいだろ?こんなの…」 「んー、なんか目についちゃって」 「いつもそんなだよな、瀬戸さんって…」 「…」 「悪い意味じゃないからな?」 「…ははッ」 鼻の奥がツンと痛んで涙が出そうだ。 右腕のパイプ椅子を一旦下に置き、自分に立てかけた。生徒会室のドアには鍵がかかっていて開かない。 「長屋君、椅子ありがとう。ここに置いておいてくれればいいから…」 長屋君がパイプ椅子をガチャンと下ろす音がした。 「じゃ…」 私も壁に椅子を立てかけて、鍵を取りに行こうと身体の向きを変えた。
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