『君だけのために』

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 長屋君が歌い始める。  その声に合わせて優しくピアノを弾く。  掛け合いもハモリも、ひとつも忘れてなんていない。  長屋君と声が合わさると切なさに泣きたくなる。  誰かを想って書いたこの歌詞も、サビのメロディーも、一緒に作った所も、悔しいくらい愛おしくて大切で胸が苦しくなる。  途中から、長屋君がイスに腰を下ろして隣にピッタリとくっついてきた。  大好きな声が、すぐ側で私の声と混ざり合う。  歌い終わって、ピアノの音が消えて、それでも2人でそのままイスから動かずにいた。  長屋君の携帯のバイブ音がして、私は忘れていたかの様に長く息を吐いた。  立ちあがろうとする私を引き寄せて、長屋君は私にキスをした。
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