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長屋君は私の誤解を解くために一つずつ説明してくれた。
好きな子…それがハマっていたRPGゲームのキャラクターだったという事。金髪にしたのも、そのゲームの影響だったというオマケ話付きで。
曲が完成して嬉しくて無意識で歌っているのをみんなに聴かれ、仕方なくサビだけを歌って聴かせたという事。
「俺、あの時一緒に歌ってなかったよ」
「え?」
「俺が歌うのは…さ、ささ、さ」
「長屋君?」
「清花…あぅ。さ、サヤ‼︎サヤとだけだから」
「顔、真っ赤だよ」
「サヤ…好きだよ」
長屋君の携帯からは、ずっとバイブ音が聞こえている。
開け放たれたエントランスの外からは、いつの間にか終わっていたバンドの演奏に代わり、アコースティックギターの優しい音色と裏返った声のラブソングが聴こえている。
「私も好きだよ…も、もー…」
「も?」
意地悪な顔して笑いながら顔を近づけてきた長屋君に不意打ちのキスをした。
驚いて動きの止まった彼に、私はもっと意地悪な顔して笑って見せた。
「好きだよ。モトくん」
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