『君だけのために』

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高校からは電車で二駅。長屋君の家が中学校を挟んでうちとは反対側にあるという事は何となく知っていた。 見覚えのある道を15分程歩いた所で 「ここだよ」 と長屋君が言った。 「あ…ここだったんだ。知らなかった」 友達の家に行く時に何度か前を通った事のある、坂の途中の青い屋根の一軒家が長屋君の家だった。  「お邪魔しまー…す」 「あぁ、大丈夫‼︎誰もいないから」 「あぁ、そう…」 「こっちの部屋、ピアノあるから…」 通された部屋にはアップライトピアノが置いてあった。 「あ、手洗いたいんだけど…」 「あぁ、こっち」 洗面所に案内され、手を洗う私の頭上に長屋君が手を伸ばす。 うわー…近い近い‼︎ 「ここだっけか?新しいタオル…」 「大丈夫、自分のあるよ」 私は脇に挟んでいたハンドタオルを見せた。 「あぁ、そう?」 そう言って、長屋君は私の後に手を洗い、掛かっていたタオルで手を拭いた。 「よし‼︎じゃあ、早速お願いします」
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