ひとまず一件落着

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ひとまず一件落着

 警察は、想像以上に早く駆けつけてくれた。私がこの家に来るまでにかかった半分以下の時間でやって来たのには驚いた。警察の迅速な行動には敬服するばかりだ。  ただ、土地柄だろうか。  警察と一緒に、地元のおじちゃん達も駆けつけてくれたのは予想外だった。  一人でこの土地にやって来た私のことを、地元ネットワークを介して皆が共有し、心配してくれていたらしい。あの食堂の店主の姿もあった。気が利かないとか、放っておいてほしいだなんて思っていた自分を恥じる。私が逆の立場だったら、同じことができただろうか。おじさんの姿を見た時、私は思わず涙しそうになってしまった。  不法侵入していた3人組は、やはりというか心霊系作品を主としたビデオクルーであった。  視聴者投稿を受け付けつつ、社内クルーたちが主導となって作成している場面もあり、そのための撮影を無断で常習的に行っていたようだ。今回はその舞台に、わが家が使われそうになっていたのだ。  ご丁寧に私を恐喝するまでの様子が、しっかりとビデオには収められたままだった。自分たちが残した十分すぎる証拠の前に、男たちは自分たちの犯行を認めるほかなかった。  だが、せめてもの腹いせにか知らないが、「その女にやられた。その女は化け物を従えている」と騒ぎ立てた。  しかしビデオには“運悪く”そんな場面は記録されておらず、また地元住民たちの「丸子さんの娘さんが、そんなことするわけねぇだろ」という理不尽なほどの擁護の声に押され、男たちはおずおずとパトカーへと乗り込んでいく羽目になった。  そして、私もそのまま今日は地元のおじさんたちにエスコートされながら、町唯一の民宿に泊めてもらえることとなった。  今までの私だったら、その誘いを内心では鬱陶しく感じていたことだろう。  だけど今の私にとって、その誘いは何よりも温かいものであった。町の人たちが見ず知らずの私に、どうしてここまで親切にしてくれるのか。それはこの人たち自身が持つ優しさであり、そして、かつてこの地で私の父が育んだ絆あってのことなのだと、感謝せずにはいられなかった。  こうして、とにかくイベント尽くしの私の一日が、ようやく終わったのであった。
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