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悩めるきっくー
きっくーは何度目かのため息をついた。
大好きな花に囲まれた生活。
この街の人々は花好きで、ことあるごとにきっくーの店を利用してくれる。
西 令草などはお得意さまと言ってもいい。
ただし花占いと称して花をむしるのはきっくーが許さない。
それはどうでもいい。
花屋という仕事は天職だと思うし、生きがいを感じている。
きっくーは人より小さいが体力もある。
けれども、母の日というイベントが間近に控えたこの季節は別だ。
面倒くさいので先延ばしにしていたが、終わりの見えない千本ノック並みに忙しいあの日。
花屋の陰謀に間違いないが、その花屋であることをきっくーは年に一度呪う。
温厚というページを辞書から乱暴にむしり取る。
「あーあ、さすがにもうそろそろバイト頼まないとね。仙花はエプロン着てくれるかなあ。主将くんは部活だろうな。何とか声かけられないかなあ……」
きっくーのいとこの仙花は恰好いいを信条としている。
仙花にエプロンを着せるのは難しいかもしれない。
ただし仙花の彼氏の相撲部主将に萌えエプロンを用意すれば釣れはしないか。
土壇場のきっくーの思考はどんどん斜め上に駆け上がっていくのだった。
物思いにふけるあまり瞳孔かっ開いちゃってる。
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