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三段を作り始めて一週間が過ぎた。アイデアは大体固まったが、もの自体をどうするか。盤は紙でもいいだろうが、これを形にして需要はあるのだろうか。
「そんなの完成させてみなきゃ分からないじゃん?」
さくらなら、そう言うとは思っていたが真正面から言われると尻込みする。
「でも楽しいのかな?」
お弁当の唐揚げを突きながら弱気発言をしてしまう。もう、さくらたちとお弁当を食べるのは日課になっている。
「作っていて春樹は楽しいでしょ? それをちゃんと伝えなよ」
推しだとは言っても、僕の行動言動を全部認めてくれる訳ではない。愚痴を言えば発破をかけるし、落ち込んでいたら声をかけまくる。さくらにそっとしておくという選択肢は今のところ見当たらない。
「大体さ、春樹、どんなゲーム作ってるのかまだ教えてくれないよね? 何も見せずに悩んでも仕方ないじゃん? 私たちだってやってみなきゃ面白いかどうか分かんないし、改良点も分からないよ。そろそろどういうゲームか教えてよ」
「そうか……。そうだよな」
教えようとしたその瞬間、竜太が僕に手のひらを向ける。
「待った。最初に聞くのは時生がいい。時生も協力してくれると言ったのだろう? すでに時生は関わっている。俺らに教えるのは、そのあとでいい」
「流石、眼鏡キャラ」
さくらは、ケラケラと笑うが僕の気持ちは重い。
「でも……」
「でももヘチマもない。いけるかどうか判断してもらえ。春樹は時生からアドバイスもらってから生き生きしている。そろそろ春樹の一番の理解者が誰だか考えたほうがいい」
そんなのは竜太に言われるまでもなく分かっている。分かっているけど、だったら僕が時生を避けていた理由が見当たらなくなる。全くの無意味になる。
「竜太、あんまり春樹をいじめるなよ。春樹だって分かってるって。そのゲームも何のために作っているか含めて」
隼人の言葉を聞いて、僕はため息を吐く。僕のしたことはただのわがままなんだろうか。僕が謝るべきなんだろうか。
「竜太も隼人も春樹をいじめるなよ。人間ってそんな簡単じゃないんだよ。感情があるんだから」
さくらは庇ってくれたが、確かにこのままじゃいけない。中学生のときのことも時生には一切の悪気はなかった。だからこそたちが悪い。僕をモデルにした版画をイケメンにしたからとか、くだらない理由だけど。ただ周りの反応は僕が背を向けるのに十分過ぎたんだ。
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