算段

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翌日、大欠伸をしながら校門を通り抜ける。そこにはまるで待ち構えるように時生が立ちはだかっていた。 「春樹おはよう」 「朝から何だよ?」 「おはようにはおはようだろ?」  満面の笑みの時生が鬱陶しい。昨日のことを悪いとも思っていないのか。せめてクラスが違うのが救いだが、時生は大っぴらに僕を探し出すだろう。いい意味でも悪い意味でも時生は人を巻き込むのが巧いからな。 「で、どう?」 「何がだよ?」 「何かを作り出すってやつ」 「何にもできてないよ」 「ふうん」  しばらく間があったので、時生の顔を覗くと満面の笑みで僕を見ている。 「何だよ?」 「春樹、寝不足っぽいなぁと思って」 「もうついてくんなよ」  僕は足早に歩き出す。本当むかつく。なんでも見通してますよって態度の時生が。時生も流石に追ってこなかったが、昼休みにまた探し出されるのだろう。僕を追いかけている暇があったら彼女の一人でも作ればいいのにさ。  眠たい授業を乗り越えて昼休み。弁当を手に教室を出ようとしたらクラスメイトに声をかけられた。 「ねぇ春樹くん、一緒にお弁当食べようよ」 「えっと……」 「名前も覚えてくれないんだ」  ケラケラと笑う彼女とそれを微笑ましそうに見ている男子二人。 「僕は……」 「私、さくら。でこっちの眼鏡が竜太でこっちの長身が隼人ね」  いきなりの自己紹介に面食らう。でもまぁどうせ時生関係なのだろう。 「はい座って座って!」  さくらに押されて僕は席につく。 「春樹くんってあんまり他人に興味なさそうだよね? 私たち同じ中学だったのに」 「そうなの?」  仕方なくお弁当を開く。全員お弁当だ。 「まぁ仕方ないか。私たちは普通の子供だけど、春樹くんは目立ってたし」 「僕が目立ってた? 違う。目立ってたのは時生だ」 「今は春樹くんの話をしているんだよ。時生くんは関係ないよね?」 「時生の話をしたかったんじゃないの?」 「まあ気になると言えば気になるけど、春樹くんのほうが気になるかな? 春樹くんは陰のあるイケメンだから」 「目、腐ってるの?」  竜太と隼人がクスクスと笑う。 「さくらの目は腐ってないよ。今だって勇気を絞り出して推しに話しかけているんだから」  竜太が楽しそうにおどけて見せた。 「推しって誰のことだよ?」 「そりゃあ春樹くんに決まってるじゃん」  隼人がさくらより先に口を出す。満面の笑みだ。 「やっぱり目腐ってるんじゃない?」 「まぁまぁ」  さくら本人が笑いながら僕を見つめてくる。 「昨日の時生くんとの話聞いてさ、私たちは力になりたいと思ったんだ。推しである春樹くんのね」  全く話が見えてこない。僕は今、何をしているんだろう。そう言えは高校に来てから時生以外の生徒と話すのはもしかしたらはじめてな気がする。
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