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【さっきの投稿はウソでーす!あたしたちはラブラブです!!別れるわけないじゃないですかぁww エイプリルフールでしたー】
SNSのつぶやきを見て、ハルカは少し腹立ちを感じたけれど、それはほんの一瞬のことで、すぐに何ともいえない虚しさでいっぱいになった。
ハルカが振られたのは3月31日。
“年度末か、すごく区切りがいいな”
“これが明日だったら、エイプリルフールの嘘かもって、思い込もうとしただろうな”
ショックを受けている自分とは別の、もう1人の自分が、客観的に事態を見ていた。
大好きな彼だった。
彼とつきあえるなんて、生きていたら、こんなことも起こるんだって思った。
自分が主人公のドラマが始まったみたいに感じた。
彼と一緒の時間は楽しくてしょうがなかった。
彼とつきあってから、一緒じゃない時間までキラキラし始めた。
手を繋いで歩いている時、「こんな素敵な人が私の彼氏なんです」って大声で世界に知らせたかった。
自分がとてもイイ女になった気がした。
新しいものを見つけたら“彼だったら何て言うかな?”と思った。
素敵な場所は“今度、彼と行こう”と思った。
美味しいものは“彼にも食べて欲しい”と思った。
大好きで、大好きで、そして大好きだった。
でも大好きなのに、いつからか報われないとも思っていた。
彼の口から出る言葉は正確に理解したいと、意味を隅々まで考える癖がついていた。
少し連絡があくと、不安でたまらなかった。
彼の態度にそっけなさを感じると、納得がいくまで頭の中で反省会を開いた。
彼が大好きなんだから、彼に合わせるのが当たり前だと思った。
でも、無理をして合わせることを重ねると、頑張っているのに見返りが足りないと思うようになった。
愛する側と、愛される側の不均衡に我慢ができなくなっていた。
“ちょっと、これは続けていけないかもしれない”
ハルカはそう思ったけれど、自分から離れるなんて無理だった。
「もう続けていくのは無理だと思う」
そう彼に告げられた時、そう思っていたのは自分だけじゃなかったと知った。
二人が同時に経験しているものを、同じように感じていて当たり前だった。
自ら終わりにできなかったハルカは、彼が終わらせてくれたんだから、受け入れようと決めた。
あんなに大好きだったけど、別れ話はあっさりとしたものだった。
でも、あんなに大好きだったんだから、心は大きく乱れた。
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