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眠れなくて日付が変わった。
眠ることを諦めたハルカはSNSを見た。
【ご報告があります。私たちはこの度、お別れすることになりました。今まで応援してくださった皆さま、ありがとうございました】
ハルカがたまに参加している社会人サークルの二人だった。
友だちと呼べるほど親密なわけじゃない。
でも、知り合いと紹介されたらショックなくらいには仲良くしている二人。
女性しかいないサークルの中で、このカップルの二人はとても仲が良かった。
周りが「もしかして、二人…」と思い始めても、誰も不必要なことは言わなかった。
やがて二人はSNSで交際宣言をした。
みんなはネット空間の中では祝福をしたけれど、顔を合わせた時には何も言わなかった。
そっと見守るかのように、二人の交際を応援した。
その二人が別れたことに、ハルカはショックを受けた。
二人とも知っているだけに、心配になった。
でもどこかで、心強さも感じた。
“大好きな人と別れて、今、つらい思いをしているのは私だけじゃないんだ”
“こんな身近に同じ気持ちの人がいる”
ハルカが彼氏と別れたことと、サークル内の二人が別れたことは何の関係もない。
二人が別れても、彼の気持ちに変化は起きない。
だけど、同じ時に、同じ気持ちを感じているだろう人が二人もいるという事実は、ハルカを勇気づけた。
“一緒に頑張っていきたいな”
ハルカは彼氏と別れたことを話さないだろうし、二人に「別れたの?」と話題を持ち出すことも、多分ない。
直接に言葉を交わすことはなくても、共に立ち直っていけたら良いのにと思った。
【ご報告があります。私たちはこの度、お別れすることになりました。今まで応援してくださった皆さま、ありがとうございました】
という投稿から数時間後。
【さっきの投稿はウソでーす!あたしたちはラブラブです!!別れるわけないじゃないですかぁww エイプリルフールでしたー】
という投稿を見て、エイプリルフールは残酷だとハルカは思った。
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