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料理係りは午前九時に集合。お花見は正午から始まるというのに、面倒くさい係を押し付けられたがために他の生徒より、早く学校に行かなければならない。
けれど、授業が始まる時間より遅くいけるという点がまだせめてものの救いかもしれない。授業は八時四十分より開始だ。
欠伸をかみ殺しながら調理室に足を踏み入れると、他クラスの生徒の姿が目に入った。
あれ? クラスの人たちはどこにいるのだろう。なんか淋しいぞ。
だからすぐさま周囲を見渡すと、風のように笑みを浮かべる麗子さんを発見した。
「おはよう」と抑揚のない声で挨拶をすると、麗子さんは、「おはよう」とカナリヤのような声で返してくれた。
「前もお話したと思うけれど、若宮さんは私と一緒におにぎりを作る係りね。ご飯が炊き上がったら、隣の試食室に移動になるから。そこでおにぎりを作るの」
朝っぱらから、なんて鮮やかなんだろう。
朝っぱらから、なんて爽やかなんだろう。
やっぱり麗子さんとは違う生き物なのかもしれない。同じ人間とはとうてい思えない。
調理室のガスコンロと机は一クラス一つしか与えられていなかった。
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