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炊飯器は一升炊きなので(担任が貸してくれたのだ)、これを四回稼動させなければならなかった。足りなくなるよりは余ったほうがいいだろう、ということで単純に一人一合の計算。炊き上がったご飯をボールにうつすと、麗子さんはまたお米を研いで炊飯器にセットした。
目分量でご飯をサランラップの上にのせていく。少し冷めたら、具をのせていく。そして握るのだ。
にぎにぎ……にぎにぎ……
五個目のおにぎりを握っているとき、麗子さんが口を開いた。
「児玉君のこと、どう思う?」
ただでさえ緊張するこの場で、麗子さんにそんなことを聞かれたらどうしたらいいかわからない。
「どうって聞かれても。どう思うもへったくれもない」
やっぱりぶっきらぼうに答えてしまった。これはこういう癖だから仕方ないのだ。
ごめんなさい、麗子さん。けして質問内容に嫌気がさしたわけではない。
いやいや、質問内容には困ったのだ。けして麗子さんに嫌気がさしたわけではない。
けれど、麗子さんはにこりと笑んで、
「私、児玉君と同じ中学校なの」
初耳である。
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