16人が本棚に入れています
本棚に追加
「お料理の打ち合わせをしたいのだけれど、いつなら時間が空いているかしら」
放たれる言葉の一つ一つが輝いている。
透明で、きらきらと光を放っている。こんな人もいるんだなぁ。きっと自分とは違う人種なのだ。
「いつでもいい。ただ、放課後は部活があるから。前もって言ってもらえると助かるな」
なんてぶっきらぼうな口調なのだろう。
なんて自分は不器用なのだろう。
言いたいことはそんなことではないのに。表現したいことはそんなことではないのに。
麗子さんは気を悪くしたのかな、と思ったけれどそれはいらぬ心配だった。
「そうね。若宮さんは柔道部ですものね。できるだけ、練習に差し支えないようにしたいから、明日のお昼休みなんてどう?」
その提案に反対する理由などあるわけもない。
そして麗子さんは「次の大会も応援しているね。練習、がんばってね」と小鳥のように笑んでからその場をふわりと立ち去った。
麗子さんの甘い残り香に身体を優しく包み込まれる。
その日の部活は、ほとんど集中できなかった。意識をこらせば、まだ麗子さんの香りが残っているような感じがした。
休憩中――。
最初のコメントを投稿しよう!