組長のお花見大作戦

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 並んでいた水道が空いた。豪快に蛇口をひねり、豪快に水を顔にかける。このまま体中にも水をかけたい気分だったが、水浴びするには少々時期が早い。少々どころではなく、かなり早い。  首にかけていたタオルで顔を拭き、次に順番待ちしていた人にその場をゆずる。そしてタオルから顔をはなしたとき、目に入ったのは児玉だった。 「組長さあ、最近、俺に冷たくない?」 「もともとこういう性格だ。悪いか」 「悪くないけどさぁ。麗子さんと俺に対する態度が全然違うじゃん」 「当たり前だ。麗子さんはレディだからな」 「うわ。男女差別」 「うっさい。さっさと練習に戻れ」 「冷たいなぁ。組長」 「ふん」  鼻息荒く、武道場に戻る。  同じ学年で同じ柔道部の田森くんは、「君たち、相変わらず仲が悪いね」と笑っていた。  失礼だな、田森くん。ただ仲が悪いわけじゃない。犬猿の仲なんだ。  と言ってやろうかと思ったのだけれど、言うだけ無駄なような気がしたので、そっと心の中に閉まっておくことにした。  お花見当日――。  私服でもいいという通達が出ていた。
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