青い瞳

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 次の授業は実験室で行われるため、教室には数人しか残っていなかった。最後だと戸締まりをしないといけないので、残っている生徒も急いで外に向かっている。僕は気にもせず、窓際の彼女の席へと向かう。机の上はホコリ一つない。もちろん落書きもなく、新品のようにきれいだった。中には教科書やファイルが残っている。忘れたのか、それとも自分が突然消えることを悟られたくなかったから置いていったのだろうか。  僕は窓から外を見る。毎日、彼女が見ていた景色だ。視界の先には旧校舎があり、下に視線を向けると細長い中庭が見えた。点々と植えられた桜の木は、満開の時を過ぎて散り始め、降り積もった花びらが庭を桃色に染めていた。  庭の真ん中には丸い池があり、そこには雲一つない空が映し出されている。その色は、彼女の瞳と同じ、透き通るような青だった。
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