青い瞳

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 井上先生がフランス革命の何たるかを黒板に書き続けているが、生徒の半分以上はうつむき、フランスではないどこかの世界へ旅立っている。そんな中、窓際の一番前、僕の席とは真反対にある場所に顔をあげている生徒がいる。しかし、授業は聞く気がないようで、窓の外へとその顔は向けられている。 「ここ大事だから聞いとけよ。テストに出すからな」  井上先生が言うと何人かの頭がゆっくりと起き上がった。それと同時に窓際の席にいる彼女の顔も黒板に向く。僕はその横顔をじっと見つめる。普通の人よりも一回り小さい輪郭、すらっとしたあごのライン、まるで人形みたいだ。黒板に向けられた目はまん丸で、サファイアみたいに青い。 「このページの十行目だ。ライン引いとけ」  井上先生の言葉に皆が教科書を慌てて開く。ページがめくれる音が教室に広がり、寝ていた残りの生徒達も顔を上げる。  その時、青い水晶の目が僕の方へ向く。教科書を必死にめくる生徒達をすり抜けて視線がぶつかった。僕はハッとして顔を下に向け、教科書にラインを引いていく。心臓がドクドクと音をたて、体内が一気に熱くなるのが分かる。しばらくして教科書を見て唖然とした。ページ一面が赤の蛍光色で染まっていた。
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