温羅の城へ

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温羅の城へ

 さーてついた。ここが鬼ノ城だ。  おっさんが、のほほんと言った。 「とりあえず、今日はここまでにしよう。早く帰って、真琴のお腹撫でてやらんとな。あれに慣れきってるから、しないと多分へそを曲げる」 「今更でしょ?あんたが奥さんのお腹撫でてんの」 「ところがどっこい、今回は違う。まあ傷はもう治ってる完璧に」  傷って。あの鋼鉄の嫁の腹を傷つけられるような人間がいるのか? 「それ、どんな化け物?」 「あー。俺の元カノだ。蛇と化して真琴を襲った。病院に残されてた研究データを見る限り、多分子供はもう生まれてるだろうな」 「一応聞きますけど、子供って?」  空を軽く仰いで、勘解由小路は、 「あああ。染色体レベルで操作された、俺の精子だよ。あの女は、ただの代理母だ。母親(卵子提供者)は今調べてるが」  ――結局、お前んちのトラブルか。こいつ等は毎度毎度。  私は、釈然としない思いを抱いていた。  さて、このしょうもない連中に頼るしかないの?  暗澹とした気持ちでいいた私に、おっさんが言った。 「中々、壮観じゃないか」 「本気で?本気で思ってます?」 「お前な、変な先入観があって、六反にいた雑魚いフナ侍って目で見てたんだろうが、陰陽師の目できちんと見てやれ。妖魅、とりわけその(はく)は、人間よりもよほどフレキシブルだ。例えば、うちの子の視線で見ると、連中まはた変わって見える。流紫降の視線だと、こいつ等はウィーン少年合唱団みたいになる。トキならまあ、舎人(とねり)めいた格好になるんだろうな」  フナがウィーン少年合唱団って、嫌だ。 「こいつ等を舐めるな。こいつが雑魚のままか、力強い存在になるかは、お前にかかっている。3流陰陽師で終わるなよ?百鬼姫なんだお前は。こいつ等を弱くするな。要するに、これが俺の授業だ。よちよち歩きの赤ん坊育てるのに、ここまではせん」  んー。少し唸って、私はフナ侍の魄を操作して、彼等を見た。  ――(けん)。  うおう。何か、ガスガス言ってた雑魚い1山幾らが、精強な侍の集団に変わっていた。  あー。あー。ふーん。  これでいいのね?  私は、背後に控えた五山系の高僧めいた、タニシ大僧正に告げた。 「総員!これから鬼の王と名高い、温羅の居城に乗り込むわよ!百済の仏教の伝来かますわよ!ああ、温羅って百済の王子だったわよね?」  それで、少し考えた。 「瀬戸大将と僧正、払子守と経凛々、長冠の5人は私のそばに!侍の集団は、後備(あとぞなえ)として門前で待機!持国広目増長多門の四天王に、毘沙門加えた五山の托塔でいきましょう!」  おっさんが、満足げな表情を見せていた。
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