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迷子の犬
その時、夏休み故に、私立狐魂堂学園高校の寮は、酷く閑散としていた。
夏休みに里帰りしない、ポッター的生徒はまま存在しているのだが、この学校には、極めて厄介なポッターが2人存在している。
その中の1人である、妖精王ライル・グリフィス・コティングリーは、1人レスポールの弦の張替え作業をしていた。
いつものメビウスを咥えて。
「ライルさん。ライル」
もう1人、志那都の風神と呼ばれる生徒、風間静也が現れた。
「ああん?何だ静也、どうした?」
「紀子が、紀子がいないんです」
「よく探しゃあいいじゃねえか。んー、張り替えたんだがよ。下手に鳴らすと舎監の元道の野郎がうるせえからなあ。土7尺掘り捨てるって、俺は玄明かよ」
気味悪いくらい、日本の宗教に詳しい毛唐の姿があった。
「だから、ライルどうしよう?」
「あああん?ようやくあれか、プリンセスにラブ波動かましてんだな?」
「そういう訳じゃないんだが、今日、まだ紀子の尻を嗅いでいないということに気付いて。ソワソワと落ち着かなくなっている」
変な中毒症状出てやがる。JKの尻嗅がねえと、指が震えるって何なの?
「その辺にいるんじゃねえか?ピクシーは、姫は魔上皇といやがるとか言ってたぜ?下手に師匠に近付かねえ方がいいんじゃねえのか?面白おかしく酷え目に遭わされんぞ」
だらけて座っていても、勝手に情報が入る。妖精王の恐ろしさだった。
「確かに、先生の邪魔をすれば恐ろしい目に遭う。でもそれ以上に、紀子の尻に頬ずりして、ひたすらクンクン嗅ぎたいという気持ちに、嘘は吐けない。俺は、どうすればいいんだ?」
どうすっか?この変態小僧。犬の欲求と、童貞の性欲が、訳解らん風にこんがらがってやがるな。
「よし!じゃあ静也、プリンセスを探せ!お前が本気で探したら、逃げられる奴なんかいねえからよ。尻の匂いより、霊気の痕跡を嗅げ。お前風獣憑きだろうが。そのくらい、朝飯前じゃねえのか?」
静也は、少し考えた。
「――ムク!来い!」
風獣を身に宿し、開いている窓から、静也は飛んでいった。
「ジェット気流利用して空飛んでんな。あいつ」
さて、俺は、どっかのフェスでミルフでも探すかあ。どっかにいんだろう。見せろっつたら、その場で生尻見せるヘンタイミルフが。
今年の夏は、30人斬りキメてやんぜ。
クソしょうもないことを考えながら、イギリスの妖精王は姿を消した。
上空13000メートルに達した静也は、強い風を感じていた。
気持ちよさそうだな。ムク。
風速100メートルに達する風を、平然と受け流した風神は、東に向かって飛び去っていった。
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