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困ったら壁画
静也が、また温羅に蹴り倒された。物凄い蹴り下ろしで、静也の鎖骨が砕けていた。
私は暇だったので、先生とモノポリーをやっていた。
「はい静也起ー立。って先生、この局面でM&Aしないでくれます?」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ゾンビか?!こいつは?!」
温羅は、不死身の犬に軽くビビっていた。
打ちのめされ、全身に打撲と骨折があった。生きているのが不思議なほどの。
「いい加減しつこいぞ?!何だ?!その異常な回復力は?!」
「ただのヒーリングファクターだって。今後、こういう人間が他にもいるんだ早く慣れろよ?温羅のテコンドーになす術なしか。理解した。この温羅の動きが、のちにテコンドーになるんだな?」
勘解由小路がのほほんと言い、案の定温羅が怒った。
「鬼に代々伝わる、鬼流空手と言っただろうが!テコンドーだと?!あんなダンス競技知らんぞ!」
「何言ってんの?例の壁画によれば、温羅の動きがテコンドーの起源なのは明らか。何せ彼等は半万年前から日本が嫌いだし。ちなみに万能壁画によれば、この前のレーザー照射問題まで予言されてたのよ?これだからネトウヨは」
姫に呷られたネトウヨの姿があった。
「うわあああああああああああああああああああああ!!もういい!俺の剣を持って来い!」
刃渡りが2メートル以上ありそうな利剣を、杉材のように振り回していた。
「もはや、剣がインチキとは言うまいな?!モノポリーをやめて私に注目しろ!一生懸命戦ってるんだぞ!」
「観客はいるじゃないか。あっちを見ろ」
「ただの案山子だろうがあああああああああああああああ!!!ここは!韓国GPか何かか?!」
「そのやり方でいいなら、幾らでも呷れるわねこれ。静也―負けんなー。案山子に手え振ってやれ」
「皮膚――なのか?剥がれて藁がむき出しに。服の色も何かおかしいし」
「案山子はあれだな。日本製の膠がなかったんでな?残念ながら皮膚が剝がれちゃってるぞ?」
「400年かけて水車作れなかったとか、盛り込むの難しいわね?」
「クソ暇そうに、モノポリーやりながらこんな仕打ちを受けるとは。首が飛んでも動いて見せるとか、言いたかったのになあ。ああ温羅さん。剣は使ってくれて構わない。俺の空手は、真琴先生直伝だ。彼女はバジリコックだが、それ以前に空手の超達人だ。妊娠中に何度拳をぶち込まれたか。あの突きも蹴りも、俺の中で生きている。思い出すとゲロ吐いて死にそうになるが」
「ああ、まあなあ。俺と子供作るか、空手しかしてこなかった奴だからなあ真琴は。ストイックに、常人では到達出来ない場所に、到達しちゃったんだなあ。思い起こせば、結婚式で護田さんのガード貫通して、俺の肝臓を再起不能にしちゃったしな」
「何したの?あんた式で?」
「あああ。まあ若気の至り的に、興津根来とか、真琴の母ちゃんと浮気したのが小鳥遊によって暴露された。当時俺もアホでな?母親の方が具合がよかった。とか暴言吐いた。今は違うぞ?俺は真琴への愛に目覚めたんだ。はいまたビル建てちゃうぞー」
酷すぎるわあんた。とりわけ小鳥遊も。
「あ、静也構え変えたな?夫婦手って奴かあ。古流の。ああ、捻り込むような連撃で、温羅の剣を上手く封じてるな?おい、そろそろ参ったを言えよ。空き缶って、今のモノポリーじゃ売ってないんだな?」
「あああ。静也の正拳が決まったわね?前のめりに倒れんのね?ああはいはい。先生の勝ちですよー。静也ー、こっち来い。頭撫でてやるから」
違う。こんな勝利は違う。血塗れになった静也は、釈然としない、血の味のする勝利を味わっていた。
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