隙間産業皇女

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隙間産業皇女

 灼熱もかくやという夏の日差しを遮断した、快適極まりないリムジン内の空間があった。  妖魅が操るキャデラックワン・ビースト。こうしてみると、おっさんの車に乗ったのは初めてだった。  色んなところで、偉そうなリムジンが視界の隅にはあったのだが。 「何だな、まあ行こうか。轟さん予定通りのコースでな?」 「どこに?」 「まあ、さほど危険ではないから心配無用だ。要するにこれは、使う側の人間の、責任と義務と利権についての授業だ。お前は百鬼姫で、その役割は俺によく似ているからな。なあ、うちの坊主の流紫降(るしふる)とは、もう会ったのか?」  まあね。私はそう応えた。 「物凄い魔王ぽかったわよ?静也が膝折ってはい陛下、とか」  どういう教育をすれば、こうなるんだろう。キチンと躾けろ。とは思った。 「流紫降はまあ仕方ないんだ。無自覚に物凄い霊気を垂れ流してるからなあ。問答無用で妖魅を統べてしまうんだ。っていうことは、流紫降が活動可能な都内と近辺の妖魅はほぼ駄目だ。流紫降王国になってしまっている。あれでも小2の小僧だからな。勝手に県外に移動するとかは考えられん。真琴が心配するからな。あれはあれで凄くいい子なんだ」  ああそうだった。でも、夏休みで県外に行ったりはしないの? 「つまり、これからのお前の行動を伝えてやろう。お前はお前で妖魅を従えて回れ。ただ、お前は、流紫降と莉里の行動の狹間で動くしかないんだ。あいつ等はつまるところ、同じようなことをしている。そこにいるだけで、妖魅の国内勢力図をがらりと変えてしまう。お前は、その隙間に顔を突っ込んで営業するしかない。生まれた時代間違えたな。大正昭和辺りに生まれれば、最高の帝になれたのにな。まあ摂政は俺のジジイになるんだろうが」  要するに、私は究極の隙間産業らしかった。  デビュー遅くない?私が百鬼姫として活動しようとしたら、もう既に子供2人に征服されて手が出せなくなってるとか。 「じゃあ早速行こう。まずはあれだ、坂東太郎の向こう岸からだ」  夏はトップの季節だし。とか言っていた。
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