12人が本棚に入れています
本棚に追加
崩壊した鬼の国
警察庁祓魔課の帝王学 姫と風獣と鬼の王編新装版
重々しい、押しつぶされそうな空気の中、カラカラと、ダイスの転がる音が響いていた。
私、田所紀子と、祓魔座学の臨時講師にして特S級祓魔官、勘解由小路降魔は、雲霞のような無数の妖魅に囲まれている。
眼前に構えるのは。列島を二分する西の首魁、名高き鬼神でもあり王でもある、温羅だった。
緊張感はどこまでも高まっていき、あまりの霊圧に、そこかしこに置かれた蝋燭が、ユラユラと揺れてしまうありさまだった。
本気?正気とは思えない。相手は西の首魁だ。号令1つで私は勿論、おっさんだって無事では済まないだろう。
はっきり言うと、骨すら残らない。
ああ、またダイスが転がる音がする。鬼の骨を削ったらしい2つのサイコロは、床に転がると、けたたましい音を立てるのだ。
ボーン素材だからなあ。とかおっさんは言う。
何故、こんなに余裕なの?あんた今、私を巻き込んだデスゲームをやってるのよ?
そして、開始から30分経って、おっさんは騒いだ。
「あああああああああああイエアああああああああああ!温羅破産!開拓地行き決定えええええええええええええい!今まで負けたことないって?!俺も負けたことないんだモノポリーは!いいとこなしの温羅さん!ねえ今どんな気持ち?!ほら空き缶やるから、そこに置いて座ってろ!誰かが小銭入れてくれるかもな?!」
モノポリーに開拓地なんかあるか。私はそう思った。
「うううううううううううううううううううううがあああああああああああああああああああああああ!!!」
いいとこなしの温羅が、悔しそうな声を上げていた。
モノポリーで簡単に列島の西半分をゲットしてしまった恐ろしいおっさんが、温羅にこう宣言した。
「よし。じゃあ、コロッケパン買ってこい。田所、お前どうする?」
「いや、要りませんて。唾入ってそうだし。こんな反韓ネトウヨの買ってきたパンなんか」
「何をおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!」
温羅の怨嗟の声は、いつまでも城内に響いていたという。
最初のコメントを投稿しよう!