いまひとたび

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いまひとたび

錆びついた思い出の鍵 握りしめて 誰のせい? とつぶやいた 深い森の奥でうずくまって 静けさに身を預けて目を閉じる 足りないものだらけ 欠けてばかり 独りは楽だと嘘をついた 寄り添う温もり 希望 いつか消えてなくなる未来の予兆に 喪って嘆くならばいらないよと 背を向けた夕暮れ 遠い過去に棄てたはずの心が叫ぶ  「あいをおしえて」 遙か彼方小さく響く愛の詩に うずくまり膝をついて泥濘に委ねた足を抜き 歩き出す 歩き出す 足りないものだらけ 欠けてばかり 独りは楽だと嘘をついた 遠い過去においてきたはずの心が叫ぶ 「あいをおしえて」 遙か彼方小さく響く愛の詩に うずくまり膝をついて泥濘に委ねた足を抜き 走り出す 走り出す 傷を負ったままでいい おそれたままでいい 地を濡らすあたたかな雨は はじまりの予感を告げている
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