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何かきっかけがあったのかな。才能があるのは明らかだから、いつかはプロになるのが自然な流れだと思って、あまり深く考えたことはなかった。
「幼馴染みが分からないんじゃ、ただのファンに分かるはずないか。まあ、それはいいとして……候君は大丈夫なの?」
「え、何が?」
「奥野棋士みたいな知名度のある人と一緒に暮らしてるなんて、世間に知られたら良いネタにされたりしない?」
「良いネタ? 俺と鏡が一緒に暮らしてることが? 友達の男同士で一緒に暮らしてるってだけだよ? 誰に知られても困らないから、そもそも誰にも隠してないし」
「でもさ、変な風に切り取って面白おかしく騒ぎ立てる奴もいるじゃん。特にマスコミ系はさ」
「それってまさか、俺と鏡が実は付き合ってて同棲してる的な? ありえねー! 勘弁してくれよ、俺も鏡もゲイじゃない……あっ、えっと」
俺はつい言葉に詰まって目を泳がせるも、それがかえってわざとらしい感じになってしまった。
「あー……やっぱ気付いてた?」
斉藤君が、少し気まずそうに右手で頭を軽く掻きながら、そう尋ねてくる。
「えっと、その……薄々。前に『恋愛対象って異性だよね?』って聞いてきたことあったじゃん。他の人からそんな風に聞かれたことなかったし、あとはたまに男の先輩や教授こと『かっこいい』って言ってるから、何となくそうなのかなって……」
「うんうん、そっか。俺もさ、別に隠すつもりはなかったんだけど、いきなりカミングアウトされても候君も困るかなって思ってなかなかハッキリとは言えなくて」
「そんな。困ったりしないよ」
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