斉藤君

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「良かった。あ、でも奥野棋士に対しては別にそういう感情じゃないからね。将棋好きとして、ファンなだけだから」 「うん、それは分かるよ」 もしそうだとしても、それをどうとか思うわけでもない。 さっきはつい、自分がゲイだと思われるのは不服だという発言をしてしまったものの、そもそも斉藤君がゲイなのは何とも思わない、それは本音だ。 それにしても、そう言えば恋愛なんて随分ご無沙汰だ。 小中学校の頃は何となくクラスの可愛い女の子に軽くときめいたり程度のことはあったけれど、高校は男子校だったし、彼女いない歴イコール年齢の記録は現在も更新中。 まあでも、きっと鏡もそうだよな? 鏡に彼女がいるなんて本人から一度も聞いたことないし、クリスマスの夜も正月の初詣も、俺達は毎年一緒に過ごしている。これで鏡に彼女がいたことあるならビックリだ。 そんなことを思いながら、そーいえば次の講義、今日は席順的に当たりそうだなと予想したところで、頭の良い斉藤君がヤマを張ってくれることになり、鏡の話はそこで終了したのだった。
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