幼馴染み

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そんな鏡が新進棋士奨励会に入ったのは、中一の時。 本当はもっと早く受験するように周囲からは言われていたのだが、鏡本人がなかなか乗り気にならなかったのだ。 それがある日、きっかけは分からないが、鏡は奨励会を受験した。 そして見事に合格、順調に昇級を重ねていき、リーグを勝ち抜いて四段にーーつまりプロ棋士となったのだった。 一方、俺はと言えば、どこにでもいるごく普通の大学一年生。 実家から通える都内の大学に進学したのだが、今はこの家で、鏡と二人で暮らしている。 それは何でかと言えば、鏡のお母さんに頼まれたからだ。 鏡の家には、年が離れたまだ小さな弟と妹がいる。 鏡は弟も妹も非常に可愛がってはいたものの、高校卒業後、より一層将棋に没頭するため一人暮らしをすることになった。 そして俺も、大学生になったタイミングで実家を出たいなとずっと思っていた。都内とは言え、実家からだと通学に一時間半ほど掛かるのが少し面倒だなと思ったからだ。 そんな中、鏡のお母さんから『進学のタイミングで、鏡とルームシェアしてくれないか?』と頼まれた。 頭の中は将棋だらけで、没頭すると食事も睡眠も怠ってまともな生活が出来ないであろう鏡を見張る意味で、ルームシェアを頼んできたのだ。 理由はどうあれ、鏡と一緒に暮らすのは楽しそうだと思ったら ルームシェアなら家賃も生活費も折半になるし、一人暮らしするより健全だと思われたのか、母の許可もあっさりとおりた。 そうした俺と鏡は、俺の進学のタイミングでこの家で一緒に暮らし始めた。
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