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プロローグ -仮面恋人誕生-
「いいか咲良。このことは絶対に秘密だぞ」
「わ、分かってるよ──」
いつもはお調子者の都織が、今日はやけに真剣な表情になっている。幼稚園から今の高校までずっと同じで、付き合いは長い。今までそんなことなかったのに、少し緊張してしまう。
それもそうだ。気の知れた幼なじみとは言え、目の前にはスタンドで固定されたカメラ。これから撮影される動画は、自分も知らない大勢の人へ発信されてしまう。まぁ、見る人がいるのかは別の問題だけど──。
「俺達はビジネスカップル。撮影の時だけ、恋人同士だ」
「ほ、本当に上手くいくかな──」
「大丈夫だ。俺に任せろ」
自信満々な眼差しに、思わず吸い込まれそうになる。その言葉を最後に正面を向いた都織は、決意を固めたように録画ボタンを押した。
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