散りゆく花びらのように、堕ちて

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 雲が流れていき、月明かりで辺りを見渡せるようになりました。  貴方の姿が路地に入ってきたのが見えました。  私は、いざ貴方が近づいて来ると思うと少し緊張していました。別れ話を上手く伝えられるだろうかと。  今夜で二人きりで貴方と逢うのを最後にします、そう伝えて貴方は納得してくれるのか。  最後にしなければならない……。  貴方の後ろに微かな車のライトが見えました。  車はまるで貴方の後を追うようにゆっくりと走っています。  川に沿った桜並木の土手を挟んだこの細い道路は、普段、夜ともなると車は殆ど通らない道でした。  近づいてきた車は、そのまま貴方の隣を通り過ぎるかと思いました。しかし、貴方に近づいてくるに従ってスピードが上がったように感じました。そして私が、あっ! と声をあげた瞬間、衝撃音が響いたのです。  はね飛ばされた貴方は道路に横たわっています。  貴方を撥ねた車は、そのまま過ぎ去ってしまいました。  私は必死になって貴方に駆け寄りました。  貴方の周りには血溜まりができていました。そして少し離れたところに、スマホと銀色に光るナイフが転がっていました。 「優斗(ゆうと)さん! 優斗さん!」  私は救急車を呼ぶと、ただただ気が狂ったように貴方の名前を叫んでいました。  貴方は微動だにしませんでした。  しかし、それだけでは済みませんでした。  信じられないことに、あの車が戻って来たのです。今度は先ほどとは反対方向から、凄いスピードで。  車のライトが私に向かって近づいて来た時、私は観念しました。  一瞬のことで逃げることもできず、また私には逃げる気力もありませんでした。  ところが、その車は私の手前の電柱に激突したのです。  凄まじい衝突音が闇を裂きました。  救急車が来たのはその直後のことです。
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