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武琉さんは更に帯を左右に引っ張るから、みるみる顔が真っ赤になってくる。見開いた目からはボトボト涙があふれて落ちる。
「な、なな、何してんの⁈」
「死んでやるうぅぅぅぅ」
「な、何言って……」
「ごめんねぇ、優真ちゃん、俺死ぬからあぁぁぁぁ」
「やめてぇ!」
私はやめさせようと、武琉さんの右手に左手を、左手に右手をやって帯を緩めようとした。
「死ぬの手伝ってくれるのぉ?」
と武琉さんは私を凝視する。その目は涙で潤み赤く充血していて、怖い。
「いやあぁぁぁぁ」
私は力いっぱい武琉さんを突き飛ばす。ベジタブル・アーティストである武琉さんは線の細い男であるせいか、そのまま後ろにひっくり返る。その弾みで余計に両手を広げてしまい、グンッと帯が閉まる。
「グエッ」
と蛙のような声をあげた後、武琉さんはゴホゴホと咳き込み畳に蹲った。
「だ、大丈夫?」
私は恐る恐る身を屈め武琉さんの様子を見ようとした。すると、武琉さんが突如私の足に縋りついた。
「ゆ…優真ちゃ~ん…俺…俺……優真ちゃんが創作のエネルギーなんだよぉ~」
「い、いやあぁ」
私は武琉さんを振り払い、スマートフォンを掴んで部屋を飛び出した。
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