あなたのために嘘を叫ぶ

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 4月1日、午前11時。ちょっと寝坊した。  今日から僕は小学6年生……の前に、今日はエイプリル・フールだ! 「おはようママ!ねぇ大変!僕のおへそ、こんなに大きくなっちゃった!」  パジャマ姿のまま、僕はキッチンで昼ご飯の支度をするママのもとにかけていった。  肌色の風船がしぼみかけたものを、パジャマのズボンから飛び出したように見せながら。 「きゃあああぁぁっ!」  笑い飛ばしてくれると思っていたら、ママは本気で驚いた。 「千早(ちはや)っ!あなた、なんて馬鹿なの!」  青い顔をしてママがうろたえる。 「お、お、おへそなんて…ど、どうしたら。とりあえず、しょ、小児科でいいのかしら…」  と慌て、引き出しからいろんな病院の診察券を何枚も出してきた。  そのママのうろたえ振りに僕が驚いて、ポタッと風船を落っことしちゃったんだ。  その瞬間、ママが落ちた風船に視線を落とし「と、取れたぁー!!」と叫んで崩れるように倒れ込んだ。 「ママーーー!?」  そ、そんなにリアルだった!?
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