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「ママ、今日はエイプリル・フールだよ。そんな嘘に驚いてどうするの」
笑う僕を、もの凄い形相で睨むママ。
「千早、それは去年までのエイプリル・フールの話よ。見て」
そう言ってママはテレビをつけた。
テレビでは外国のドラマが放送されていたけど、画面左側、縦に大きな文字で『政府より緊急情報』と表示されていた。
そして画面下側を少し大きめの文字がスクロール表示されていた。
『4月1日、嘘が現実に起きてしまう事例が多数あり。絶対に現実で起きてはならない嘘をつかないようにしてください。詳しくは政府HPへ』
「……ママ、コレもエイプリル・フール?」
僕はキョトンとした顔で首を傾げる。
「違うの。これを見て」
ママが今度はスマホで政府のSNSを僕に見せる。
『職場で「間違えて弁当100個注文しちゃった!」と叫んだら、本当に100個届いた。買い取らないわけにいかず、大損害です!』
『家族に「今日の入社式で、女優の上黒石萌那が来るんだぜ!」って嘘ついたら、本当に来た!感激!』
次から次へと新たな情報が流れてくる。
どの記事も写真付きで、本当に嘘が現実になったんだと思わせる。
「政府が言うには、全ての嘘が本当になるわけではなく何か条件があるようなんですって。今わかっているのが『誰かにその嘘を直接聞かしてリアクションをもらう事』ですって。千早、あなたもおへそは今本当に大丈夫?」
ママの言葉で僕はズボンの中のおへそを確認したが、ママが覗こうとしてきたので慌てて隠した。だって、恥ずかしいもん!
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