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「報告ってどうするの?」と成海の手元を覗き込むと、スマホの画面には『ついた嘘とその場にいた人数、事象(出来るだけ詳しく)、事象が起きた市町村』と項目が表示されていた。
「嘘が本当になるならさ、叶って欲しい嘘を言えばいいんじゃね?」と斗真。
「例えば?」
「えぇと……俺、宝くじで1億円当たったんだ!」と満面の笑みで斗真が叫ぶ。
「宝くじって……買わなきゃ当たらないよ?」と美保。
「そもそも小学生じゃ宝くじ買えないし」と鳴海。
「エイプリル・フールに当たりを発表する宝くじってあるのか?」と大悟。
皆に否定されて、斗真はしゅんとなってしまった。
「じゃあ僕、通信簿オール◎だったんだぜ!今日『先日お渡ししたものは間違いでした』って先生から連絡あったんだ!」と僕。
「ふーん」と皆、冷めた反応。
「ちょっと待ってよー!そこでリアクションしてくれないと、本当にならないじゃんかー」嘆く僕を見て、皆が笑った。
ちくしょー。
あぁでも、本気であの「通信簿」が間違いだったって連絡が欲しいよぅ。
ふと、笑いもせずずっと黙ったままの菜々の表情が気になった。
「菜々、どうしたんだ?元気ないな」
「……本当なのかな」とぽつりと呟く菜々。
「いや、嘘だからね、1億円も先生からの電話も」と僕。
「それじゃなくて……本当に、今日ついた嘘が現実に起こったりするのかな」
言葉を発するにつれて、青ざめていく菜々の顔。
「いや、絶対に起きるわけじゃないみたいだし」
「菜々、何か嘘ついたの?」と由奈が菜々の顔を覗き込む。
「ううん、私じゃなくて、パパが……」
―――パパ?
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