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僕たちは丘を駆け下り、大悟の案内のもと煙が出ている建設中のビルまで突っ走った。
―――まさか、まさか本当に?
現場に到着すると、沢山の野次馬と数台の消防車、救急車がビルを囲んでいた。
「近寄らないでくださいーーー!!」
「下がって、下がって!」
僕たちは人垣をかき分けて最前列へ出た。
辺りに黒い煙が漂い、建設中のビルから消防の人に支えられた作業員の人達が何人も出てきていた。
「パパは…?」菜々が青い顔をして呟く。
僕が声をかけようとした瞬間「大丈夫だよ。今、視察中だったとは限らないから…」と鳴海が菜々の肩を抱く。
ちょっと僕は肩透かしを食らった気分になったけど、野次馬の人達がわっと騒いだのですぐにビルの方へ視線を移した。
「道を開けてください!」
ビルから消防隊員がケガ人をタンカで運んで出てきた。
その人は毛布をかけられていたけど、顔と腕が黒と赤でひどく汚れていた。
「パパっ!!」菜々が叫ぶが、その声は野次馬の騒ぎ声でかき消された。
タンカはそのまま救急車へ運ばれ、すぐに救急車は出発した。
「菜々、間違いなく菜々のパパなのか!?」と大悟。
「間違いないよ…さっきの人、パパの腕時計をしていたもの!」泣き出し、しゃがみこむ菜々。
美保が菜々のそばに駆け寄り抱きしめ、人垣から一旦外に出した。
僕達も美保の後をついて出た。
「大丈夫だよ、大丈夫……」
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