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 生活リズムを崩したくないから、私は、学校が休みの日でも朝の六時半に起床する。 「お嬢、今日のご予定は?」  そして起き抜けの私の、耳元をくすぐる低い声。ややあって近くのカーテンが開け放たれる。  見れば、笑みが一つ。端正な顔立ちの中、目尻にかかる黒髪を追うように、切れ長の目をわずかに細め、唇をほのかに笑ませる。淡く、優しく。  とても造り物には見えない笑顔。 「もしも、お暇でしたら。ちょいと提案がありまして、ねぇ」  そして、少しわざとらしい口調で、目と気を引く。私を微睡みから揺り起こすのが、それ()、に命じた朝一番の役割。 「よけりゃ、『でぇと』と洒落込みませんかい?」  ヒューマノイド。そして、それにあるまじき発言。慣れた私が言葉の一つも返せなかったくらいに。
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