隠れ家

1/1
前へ
/5ページ
次へ

隠れ家

バサバサ、バサ。 スズメはいつも立ち寄っている贔屓(ひいき)の場所にやって来た。晴れている日は窓が開き、部屋の出入りが自由だ。大きな盆栽、豪華な花瓶の花、観葉植物が置かれている部屋。 「よし、この盆栽に植えよう。ここは冬も暖かいからよく育つはずだ」 スズメは桜の枝を棚の上に置かれた豪華な松の盆栽の土に挿した。松と花の咲いた桜が共存する不思議な盆栽となった。 「これで良いかな」 キンコ〜ン、カンコ〜ン。チャイムが鳴り響く。 「そろそろ、来る時間だな。ついでに食べ物をもらって帰ろう」 ガラガラガラ。扉が開くと部屋に恰幅の良い男が入ってきた。スズメは盆栽の脇でじっとしている。部屋にやって来た人物はスズメのほうを見つめていた。 数日後、あの桜の木の庭には複数の重機が入っていた。そして、すでにその場所に桜はなくなっていた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加