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校庭
子供たちが駆け回る小学校の校庭に大きな桜の木が植えられている。桜の枝にはスズメが一羽、ちょこんと座っていた。そして、スズメは桜に向かってつぶやく。
「ここはにぎやかだなあ」
「今まで静かに暮らしていたから、なかなか慣れないわ」
「それは時間が解決しますよ。いやあ、引越しできて本当に良かったですね」
「私は運が良かったわ」
「それはあなたの日頃の行いが良かったから。あの家の持ち主は資産家みたいですね。だから、高額な移植費用を出せたんです」
「でも、なんで小学校に移植なのかしら?」
「あの家の持ち主と小学校の校長が幼馴染なんですよ」
「あそこの家のおばあさんと幼馴染なの?」
「みたいですね。で、ある日校長は校長室で桜の枝を見てビビッと来たらしいです。『俺が求めていたのはコレだ』と。校庭に大きな桜の木があると、なんか箔が付きますからね。伝統がありそうでしょ」
「へぇ〜」
「校長はツルッパゲだから、ビビッとよりも寧ろ豆電球のようにピカッと光ったんだと思います。それから幼馴染の家の桜を思い出して相談したんです。そうしたら、たまたま桜の木は移植する必要に迫られていたというわけです」
「あら、あなたはずいぶんと詳しいのね」
「僕もツルッパゲにお世話になっているので」
「そうだったの?」
「これからはあなたとも近くて便利です」
「あら、私のところにも通ってくれるってこと?」
「もちろんです」
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