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「わざわざ、外国まで観に来てくれて
ありがとう」
「丁度、休みが取れたから、
リフレッシュも兼ねて」
「そうか……これからも活躍応援してるね」
「ありがとう。そっちも頑張れよ。
日本で個展開催するんだろ?」
「え~っと、それは……」
「さっき、館長さんから聞いた」
「そうか。うん、ありがとう」
「じゃあ、ここで」
美術館の玄関で彼が彼女にそう告げた。
彼女は、彼の後姿を静かに見送る……。
突然、彼が振り向くと大きな声で叫んだ。
「俺の瞳の向こうにあるものが
もう一つあったよ」
「え? 何?」
聞き返す彼女に彼が……
「それは、ミサ……君との未来……」
と言って微笑んだ。
「えっと……」
驚いた表情をする彼女にむかって彼が、
「このことは、絶対に秘密だからな」
「絶対に秘密?」
「ああ、これは君と俺とのふたりだけの秘密だ」
そう言うと、彼は彼女のもとに走り寄り
彼女を抱きしめた。
外国の田舎の美術館に飾られた一枚の油絵。
繊細に描かれた人物画の右下には、
2024.4.15
From misa to you
(わたしからあなたへ)と記載され、
題名には、
『瞳の向こうに』と記されていた。
~ 瞳の向こうに 完 ~
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