28人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
夜空を見上げて
ギシギシギシ……と木床を歩く音。
ふぅ……。
軽く息を吐いた彼女。
温暖色の灯りの下、エプロン姿の彼女は
マグカップを両手で握ると窓辺に歩き出し、
窓際に置いてある四本足の木目の椅子の上に
マグカップをそっと置くと、建付けの悪い
窓枠に手を伸ばし、拳を握るように両手で
今夜も窓枠を掴み勢いよく上に押し上げた。
ガラガラガラ……。
鈍い音とともに、夜の冷たい風が部屋の中に
吹き込んできた。
少し湿気を帯びた外気臭と排気ガスの匂いが
この場所が都会の片隅であることを教えてくれる。
窓辺から身を乗り出すように、彼女は夜空に輝く
星々を見上げると、そっと目を閉じた……。
少し遠くからアスファルトを歩く靴音が
聞こえてくる……。
最初のコメントを投稿しよう!