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バタン……。
後部座席のドアを閉める音が、
今夜も、雑踏の中に消えていく……。
「お疲れ様でした」
彼は、鞄を肩にかけると会釈をした。
「本当にここでいいの?」
運転席の女性が彼に声をかける。
「はい……」
彼がそう返事をすると女性は、
「自宅マンションじゃなくていいの?
最近、いつもこの辺で車を降りるわね。
何か特別に理由でもあるのかしら?」
と不思議そうに尋ねた。
「いえ……特別な理由はないですよ。
ただ、この歩道を歩くだけなんですが……
気持ちが落ち着くというか……リフレッシュ
できるんですよ」
彼がそう答えると、
「そう……ならいいけど。
変な人に絡まれたりしないように気をつけてね」
と言うと女性はギアを入れ直し、
車を発進させた。
走り去る車を確認した後、
キャップを深く被りなおした彼は
歩道を歩き出した。
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