夜空を見上げて

3/3
前へ
/24ページ
次へ
 近づいて来るアスファルトを歩く靴音が止まった。  彼女がゆっくりと目を開けると、 そこには、キャップを深く被った黒いパーカー姿の 男性が彼女のいる窓辺を見上げていた。  少し驚いた彼女は思わず、  「こんばんは……」  とその男性に声をかけた。  すると、男性も、  「こんばんは……今夜も星が綺麗ですね」  と彼女に声をかけた。  深く被ったキャップの下からは、 彼が、僅かに微笑んでいるように見えた。  「じゃあ……」  彼は、彼女を見ると軽く会釈をして その場を歩き去った。  ガラガラガラ……。  今夜も古びた窓枠が下ろされる音がする。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加