誕生日

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 「凄く大きなケーキですね……」  彼と、彼の周りにいる数人の人々が ゴージャスすぎるケーキを前に目を見開いた。  「特注だよね……流石!   いくらするんだろう?」  「こんなお高いケーキ……」  「せっかくだから、いただきましょうか」  スーツ姿の女性が言った。  「花束はこちらによろしいでしょうか?」  配達員の男性が、カートに載せられた 沢山の花束を運んで来くると、瞬く間にその空間に 花々のいい匂いが広がった。    「あら、もうこんな時間。  そろそろ、お開きにしましょうか。  明日も早いし……」  スーツ姿の女性が口を開くと、それを合図に その場にいた人々が一斉に片づけを始めた。  「ケーキ、お持ち帰りする?  ほとんど口つけてないでしょ?」  女性が彼に尋ねると、  「あ……じゃあ、少し切り分けてもらえますか?」  彼がそう告げると、別の女性がテキパキと、 ショートケーキサイズに切り分け、お持ち帰り用の 小箱に入れたケーキを彼に渡した。  小箱を受け取った彼は、キョロキョロと 花の匂いが充満する部屋を見渡し、  「これも……少し貰っていっていいですか? 部屋に飾りたいので……」  と言った。  「もちろん……あなたが好きな花を好きなだけ」  スーツ姿の女性が彼に優しく微笑んだ。  
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