約束

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約束

    「し……秘密だよ」   人差し指を自分の口元に当てると、   彼は、透きとおるような瞳で、   私を見つめた。   聴こえてくるのは、通りを走る車の音……と  人が激しく行き交う靴の音。   「秘密……?」   私は、彼の瞳の奥に吸い込まれそうに  なりながら呟いた。   「そう……絶対に秘密だよ」   「絶対に?」    呟く私に彼はコクっと頷くと、   「絶対に……    これは、君と俺との二人だけの秘密」   彼は、そう言い残し、優しく微笑むと くるりと私に背を向け、帽子を深く被り直すと、 大通りの雑踏の中に向かって走り去った。     そして、私は……  ひとり、自分の部屋のドアを開けると 小さく息を吐いた。
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