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部屋の窓から桜を見てきた。
去年は四人。三年前は二人。その前は三人で……多いときは五十人ほどだったか。
あれは、仲間が仲間を連れてきて、なんだか騒がしくなった年だった。
そのせいで、この場所は有名になり、仲間も私もここに居づらくなった。
それでも私がここに居たいのは、あの人の記憶を消したくないから。
外に出られない私に、あの人は寄りそってくれた。冷えるからと私の肩にガウンをかけ、花見を一緒にしてくれた。まさか、病弱な私よりもあの人が先にいってしまうなんて。まだ信じられない。
だれよりも優しい、きっと世界一優しいあの人がいたことを遺しておきたい。私が、私の記憶があれば、残り続ける。そう思って、魂だけになって四十年は過ぎただろうか。
けれども、そろそろ、あの人のところに私もいこうか。
ブルドーザーが唸りをあげ、敷地にはいってきた。桜の木は倒れた。
青い空へ翔ぶ。舞う花びらとともに。
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