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「なぜ」
「捕まるはずない」
「バカ警察に」
俺は東京拘置所にいる。殺人を犯した。長男をバカにした奴を殺した。
許せなかった。宝物をバカにされたから。
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俺が何をしたんだ‼️最愛の長男は難病で生まれていた。生まれても、すぐに産声をあげなかった。管が繋がれている。お前にわかるか❔この気持ちが‼️悲しい、ただ悲しい。俺は絶望感に打ちのめされ、夜道を歩いた。周りにはカップルがイチャツイテイル。殴ってやりたい。所詮、他人は関係ない。どうせすぐに別れるくせに。
思えば、俺はついていない。小学生の時は、池に落ちた。
俺は今1人だ。1か月前に離婚した。ただ寂しい毎日を送っている。何故こんな事になったのか、自分でも、わからない。
毎日、誰かを殺したい衝動に駆られる。それを必死に抑えている。全く何も苦労せずに、車を乗っている奴をみると、吐き気がする。ちなみに俺の車は妻に取られた。
仕事はマクドナルドで働いている。毎日、ハンバーガーを作る。ちなみに、俺の笑顔は0円だ。
1人で暮らしていると、時間を持て余す。子供の写真を見て酒を飲む。とにかく会いたい。その為なら、何でもする。
一体いつになれば、子供に会えるのか❔教えてほしい。嵐の日も、雨の日も、キミ達を考える。苦しい。会いたい。
涙を流す。毎日毎日。泣きつかれる。
いつになれば、子供達に会えるのだろう❔
マクドナルドのバイトは週三で入っている。それ以外の日は、ひたすら寝ている。
街でカップルを見ると吐き気がする。どうせすぐに別れる癖に。しかし暇だ。彼女を作りたいが、金がない。家賃と酒、携帯電話代、食費以外は仕送りしている。
ある日、アルバイトしていると、スタッフが話しかけてきた。「子供いるんですか?」「ああ」「元気ですか?」「まあ、病気だけどな」「何の病気ですか?」「癲癇だ」「それは、ひどい」そう言うと笑い出した。俺は許せなかった。気がつくと、冷蔵庫から包丁を出し、胸に突き刺した。
「きゃー」他のスタッフが叫んだ。俺は走って逃げた。
河原をひたすら走った。サイレンの音が聞こえる。パトカーが見えた。俺は住宅街に走って向かった。警察が沢山見えた。どうすれば、逃げ切れるのか?コンビニに入り、ビールを買う。漫画喫茶に逃げ込むのが得策だと、考えた。
「いらっしゃいませ」定員が無愛想な顔で言った。「一泊頼む」「ドリンクバーはどうしますか?」「付けてくれ」「わかりました」俺はドリンクバーで、コーンスープを注ぎ、部屋に入った。都合が良い事に、給料が出たばかりで、20万ほど手元にあった。しばらくは大丈夫だ。
漫画を選びに行く。
「はじめの一歩」を一巻から読むことに決めた。30巻まで読むと、時刻は午前3:00を指していた。俺は少し眠る事にした。目覚めると、7:00になっていた。俺は漫画喫茶を出た。同じ場所にいるのは危険だ。とりあえず朝食をとる店を探した。松屋の朝定食にした。290円だ。次に泊まる場所だ。アパホテルにした。1泊5,000円朝食付きだ。俺はチェックインすると、すぐにシャワーを浴びた。手から血の匂いがした。
「アイツはどうなったのだろう❔、死んだか、まあ当然の報いだ」
昼食をとりに外に出る。ラーメン屋に入った。そこで、ラーメン、チャーハン定食を頼んだ。1,000円だった。
ホテルに戻り、これからの事を考えた。北海道に向かって逃げる事にした。しばらく昼寝をした。
夕食を取る為、外に出る。びっくりドンキーに入った。家族連れで混んでいた。俺も昔は、家族で良く来ていた。息子は、「ヨーデル」が好きだった。またいつか、来てやる。「ハンバーグデッシュとコーヒー」を頼んだ。上手い。1,200円だった。
ホテルに戻り、深い眠りについた。
朝起きた。東京駅から、バスで青森に向かう事にした。俺はサングラスをして、できるだけ素性がわからない様にした。バスに乗り込んだ。思ったよりも、混んでいる。
途中、何度かパーキングに止まったが、俺はトイレにだけ行き、誰とも話さない様にした。コンビニで買った新聞には、俺のことが事件になって載っていた。刺した奴は死んだらしい。
仙台に着いた。青森まで、もう少しだ。絶対に逃げ切ってやる。あんな奴の為に人生を棒に振りたくない。仙台では、少し贅沢して、プリンスホテルに泊まった。常に帽子とサングラス、マスクをつけた。俺は指名手配されている。
ホテルで、牛タンを食べた。うまい。疲れが吹っ飛んだ。温泉にもゆっくり浸かった。ビールも飲んだ。何だか捕まってもいい気がしてきた。
部屋で、息子に手紙を書いた。現金5万円を入れた。
息子よ、事件をおこしてしまい、すまん。でも、お前をバカにする奴は許せない。だから後悔していない。お父さんは、いずれ捕まるだろう。元気に生きてくれ。また、会える日を楽しみにしている。
手紙を書いてると、涙が出た。出来れば捕まる前に、息子に会いたい。でも、それは無理だ。だから、出来るだけ、逃げる。美味しい物を食べて、綺麗な景色を見る。捕まったら、10年は出てこれない。
仙台での夜が明けた。ホテルで、簡単に朝食を済ませ、バス停に向かった。気のせいかパトカーが多い。やはり、どこかで、バレているのだろう。
バスに乗り青森に向かった。雪がひどくなり、吹雪いている。
青森に着いた。ファミレスで夕食を済ませ、漫画喫茶に入った。現金は、もう5万しかない。贅沢はできない。
漫画喫茶で、昼まで時間を潰し外に出た。青森は寒い。俺はユニクロに入りダウンを買った。¥2,000円の出費だ。その足でラーメン屋に寄った。
味噌ラーメンを食べた。¥1,000円だ。とても美味しかった。
青森にしばらくいる事にした。今夜はアパホテルに泊まる。お金を増やす必要がある。パチンコ屋に入った。今流行りの I円パチンコをやった。2,000円勝った。でかい、でかすぎる。
アパホテルにチェックインした。コンビニで買った、デカい焼きそばを食べ、ビールを飲んだ。なかなか、眠れない。捕まる恐怖に苛まれた。捕まらない為には、、、、北海道に逃げる事にした。
朝、9時に起きた。2時間だけ眠る事が出来た。新幹線で函館に向かう事にした。新幹線の中で弁当を買った。定員は若くて綺麗な子だ。いい匂いがした。3,000円もした。お金は、もう2万円しかない。
函館に着いた。潮風にのり、海の匂いがする。この地で死にたい、そう思った。すぐに仕事を探した。コンビニでアルバイトをする事にした。面接してもらい、すぐに採用になった。
アルバイトは、案外難しい。レジを覚えるのが大変だ。種類がたくさんある。あとは挨拶だ。ガキにも挨拶する必要がある。だが、やらねばならぬ。
函館に来て1週間が過ぎた。俺は、何とかアパートを借りて住んでいる。アルバイトも、少しだけ慣れた。函館はいい。景色が綺麗だし、飯がうまい。今の所、捕まる気配はない。
そんな時、優子に出会った。アルバイトでの仲間だ。食事に誘い付き合う事になった。俺が殺人犯だとは気づいていない。彼女の存在が俺を優しく包み込んでくれた。
優子は、俺より10才下の35才だ。でもしっかりしている。美人だ。なぜ結婚していないのかが、不思議だった。
何回か、デートした。
「結婚した事ないのか?」
「ないよ」
「貴方は?」
「ないよ」
思わず嘘をついた。でも、優子もおそらく嘘だろう。彼女は嘘をつく時、下を見る癖がある。まあ、きにしないが。
函館にきて、1か月が過ぎた。捕まる気配はない。彼女とは、いつのまにか一緒に住んでいる。
「ねえ、子供とかいるの❔」
「いや、いないよ」
「なんで、結婚しなかったの❔」
「相手がいなかったからさ」
彼女は、結婚について、週にI度は質問してくる様になった。年齢的に俺との結婚を考えているのかもしれない。その俺が、殺人犯だと知ったらどんな気持ちになるだろう❔時々、そんな事を考え、眠れない日もあった。
ある日、彼女がいなくなった。町中探した。でも見つからない。テーブルの下に手紙があった。
「しばらく留守にします」
一体どこに行ったのか?
自宅に電話が来た。
「貴方の秘密を知ってしまった」
「えっ、何」
「、、、、」
彼女は何も言わずに電話を切った。もしかしたら、俺が殺人犯なのがバレたのか?いや、そんなハズはない。俺は思いを馳せらせた。まさか、、、、俺は子供の写真がしまってある財布を、開いた。写真がない。彼女は写真を見たのだ。それで俺に子供がいることを知り、家を飛び出したのだ。
俺は彼女の携帯に電話をした。
「ごめん」
「、、、、」
「騙すつもりはなかった」
「気持ちの整理がつくまで、旅行に行きます。必ず帰るので、待っていて」
「わかった」俺は、「帰る」という言葉を信じ、電話を切った。
彼女は、1か月後に帰ってきた。
「もう、秘密はないでしょうね?」
帰ってきてから、毎日聞かれる。
「大丈夫だよ」
彼女が戻り、日常が戻ってきた。だけど、気持ちが落ち着かなかった。警察の捜査が北海道まで伸びていたからだ。俺は迷った。どこか遠くへ行くべきか、、、、だが、簡単に仕事を見つける事は出来ない。ここにいるしかない。
夢を見る様になった。捕まる夢だ。多分逃げ切るのは無理だろう。いつまで彼女と生活できるのか?
しばらくは、今まで通り生活した。だが、警察の魔の手は確実に近くまで、忍び寄っていた。考えた挙げ句、彼女を置いて逃げる事にした。一緒にいたら迷惑をかけるからだ。
北海道道北の稚内に向かった。稚内では、漫画喫茶に泊まった。まずは、仕事を探さなければならない。清掃の仕事に就いた。
1ヶ月が過ぎた。とりあえず捕まる気配はない。だが、安心できる時間は、ひと時もなかった。テレビでは、俺のニュースが取り上げられている。
その日が来た。
「ピンポーン」自宅のチャイムがなる。ドアを開けると警察が立っていた。
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俺は東京拘置所にいる。後悔はしていない。大事な物を傷つけられたら、誰だって仕返しするだろう。
ただ、疲れた。少し休みたい。
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