桜の咲く日に消えたあの人を今も待っています

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第3話 「洞穴の外で見張りをしてくる」 園田は洞穴の外に出た。 「私、痛み止め持ち歩いてるの。水を汲んでくるけど、痛み止めは置いていくね」 「ダメだ。水場で矢を射たれたんだぞ。うっ、うっ」 宮下は焦って体制を崩して、足の痛みを強く感じていた。 「ずっと同じ場所になんていないでしょ。薬を飲むのにも、傷を洗うにも、飲み水だって必要でしょ。ビニール袋持ってくね」 清香は地面に転がったビニール袋を手に取ると、出口に向かって歩き始めた。 「どうした?」 「私、水を取ってこれないか少しだけ見てきます」 「危ないから止めておけ」 「直ぐ帰ってきます。無理はしないので、行かせて下さい」 「俺が代わりに行くよ」 「宮下君はどうするんですか?私と宮下君じゃ敵が来た時に、戦えません」 清香は園田が手にした木刀のような長い木を見て言った。 「もしかして剣道経験者ですか」 「ああ、そうだ」 「園田さんがいてくれて、良かったです」 最初の印象はあまりよくなかったのに、人って分からないな。 清香は園田を見て、そんな事を考えていた。 そして斜面を降りていく。 「気を付けろよ。無理はするな」 園田の心配する声が頭上から降り注ぐ。 ◇◆◇  とにかく真っ直ぐに下に向かって歩いていく。 道に迷わない為だ。 しばらくすると川の音がして、目の前に小さな水場を見付けた。 周りに誰もいない事を確認して、清香は水場に近付いて手で水をすくって喉を潤した。 緊張からそれほど喉の乾きを気にしていなかったが、水を飲んだ瞬間に体が渇ききっていた事を感じた。 「動くな。これはいい土産が手に入った」 公達姿の男が弓を引いて清香の目の前に立っていた。 「きゃあっ」 清香はビニール袋を水場に置いたまま走り出した。 「止まらなければ弓で射つぞ」 ギュゥンと弓を引く音がした。 「待って」 清香は立ち止まり、両手を頭の上に上げた。 「よし、変わった格好の女だが顔は悪くない。おとなしく付いてこい」 公達姿の男は、清香の両手首に獲物を縛る紐を巻いた。 清香は抵抗せずおとなしく公達の後を付いていった。 ◇◆◇ 「宮下君、川越さんが戻ってこないんだ。君の傷の具合を見せてくれ」 「俺のせいだ」 園田は宮下のハンカチで作った包帯を外して傷を確認した。 「上手く太い血管に当たらなかったのか血が止まりかけてるな。これなら一人でも平気だろう」 「もしかして探しに行くんですか」 宮下はさすがに不安を感じた。 「放ってはおけないからな。水はないけど痛み止めがあるなら飲んでおくといい」 水を待っていた宮下に痛み止めを飲むように勧めると、園田は立ち上がった。 「役立たずで申し訳ないです」 「いや、1人より3人で良かったと思っているよ。行ってくる」 「川越さんの事、よろしくお願いします」 園田は頷いて洞穴を出ていった。
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