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***
「酷い!」
夜。
僕がその話をすると、弟は激怒して机を叩いた。彼は、僕とは全然似ていない。僕が青い髪で青い目であるのに対し、彼はやや白っぽい金色の目に金色の髪をしていた。昼の間出張に行っている彼と話ができるのは、いつも夜の時間だけである。
「兄貴、なんでやられっぱなしなんだよ!悔しいと思わねえの!?殴り返してやれって!!」
「だ、駄目だって。あっちはたくさん人数がいるんだもの。逆らったら、僕の方がボコボコにされちゃうよ」
怒り狂う弟を、僕はどうにか宥めた。
僕のことを思って怒ってくれるのはとても嬉しい。僕にとって唯一の家族であり、かけがえのない存在だ。でも。
昼の状況を見ていない彼は、わからないのだろう。今のいじめっ子たちは、昔とは全然違うということを。
「……昔は、もっとみんなとも仲良くできてたんだけどね」
僕はため息をついて首を横に振った。
「あの子達も、ずっと優しかったんだ。僕がちょっと水を運ぶだけで感謝してくれたし、美味しい野菜を提供したら涙を流して喜んでくれた。これからも一緒に頑張ろう、この場所で楽しく生きて行こうってそう誓い合った仲だったんだ。……友達どころか、僕は家族みたいなものだと思ってたんだよ。その家族がどんどん増えて、勉強して頭が良くなって大きくなって……その様子を見るだけで僕は幸せだったんだ。それは、君も同じだろ?」
「まあ。その気持ちはわかるよ。俺は兄貴ほどあいつらに深く関わってねえけどさ。昔の兄貴は、あいつらと仲良さそうだったし……昔の兄貴はすっごく幸せそうだった」
「うん、だけど」
思い出すだけで、胸が締め付けられるように苦しくなる。あの頃に戻りたい、なんて思ってはいけない。今の方が良くなったことだって本当はあるはずなのだから。
でも。
「だけど、いつの間にか……子供達は、自分でできることが増えてさ。賢くなった分、悪い事もたくさん覚えちゃった。僕が身に着けてる服とか、僕の髪の毛とか。そういうものが高い値で売れるとか、そういうのを利用するといい暮らしができるって気づいちゃったんだよね」
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