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つきり、と痛みを思い出した。己の右肘を見る。そこには、引き裂かれたような大きな傷があった。三日前、彼等に追いかけられた時にやられた傷だ。今日出会った子供達も酷かったが、先日出会った子たちはさらに凶悪だった。僕が逃げると分かって武器まで使ってきたからだ。
僕が少し抵抗すると、彼等は諦めるどころかより凶悪な手段に打って出る。僕が泣こうが、怪我をして苦しもうがおかまいなしだ。僕に価値があればあるほど、僕が死ぬようになったら彼等もとてつもなく困るはずだというのに――どうして後先を考えてはくれないのだろう?
昔、爆弾でお腹を吹き飛ばされた時なんか本当に酷かった。内臓が飛び出して、そのまま暫く戻らなかったのだ。あれは痛いなんてものではなかった。本当に死んでしまうと思ったほどだ。
それを頑張って手当してくれたのも別の子供達だったけれど、それでもあの時僕は思ったのである。――何で僕は、毎日毎日こんな苦しくて痛い思いばかりをしているのだろう。僕は一体、何のために生きているのだろう、と。
「僕、何のために生きてるんだろう」
思わず、ぽつりと呟いてしまった。
「みんなに認められたいとか、褒められたいとか、感謝されたいって気持ち……僕は、持っちゃいけないの?僕だけは、そういうの駄目なの?昔の子たちはちゃんと感謝してくれた。今の子達は、僕の体や服を奪って、しかも奪った子同士で奪い合ってさ。僕にごめんなさい、もありがとうも言ってくれない」
「兄貴……」
「ごめんね、弟。君にこんな愚痴漏らしても、どうしようもないのにね……」
彼を困らせたいわけじゃない。彼だって、あのいじめっ子たちの迷惑をまったく被っていないわけではないのだから。
僕の言葉に、弟は唇を噛みしめると――やがて言ったのだった。
「……俺、考える。兄貴が幸せに生きられる方法。あいつらにいじめられない方法」
そんなものあるわけないだろう。彼等がいる以上、僕は永遠に搾取され続けるのだから。
そう思っていても、僕は笑顔で頷いた。弟のその気持ちだけでも嬉しかったものだから。
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