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宮永遥香は念願の地方銀行に入行することができた。
小さい頃、お小遣いをもらって、せっせと貯金箱に小銭を貯めていたが、母親が見かねて、銀行に行って遥香ちゃんの預金通帳を作ろうねと、提案した。
銀行に預けておけば、泥棒に盗られることもないし、金利といって利息という余分なお金が入るのよと、母親は言った。
初めてお小遣いを預けた銀行が松丸銀行だった。そして、社会人になった現在でも、マイバンクにしている。
地元の短大を出た後、松丸銀行に就職が決まり、母親も周りの親戚もおおいに祝福してくれた。
遥香は父親が早くに亡くなり、ここまで育ててくれた母親を、ようやく楽にできると思った。
そして、4月1日、春のうららかな日、めでたく入行式を迎えた。
松丸銀行では午前中に新入行員をホテルの大会場に集め、頭取や役員の訓示を聞かせ、午後からは事前に決められた配属支店に赴き、そこで先輩行員と顔合わせをする。
午前中の入行式は退屈極まるものだったが、午後からの入行式を遥香は密かに楽しみにしていた。
遥香には思い入れのある支店だった。松丸銀行西荻窪支店は、遥香が初めてお小遣いを預けた支店だったからだ。
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