新しい家族と学校と

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「じゃあ河野くん、わたしそろそろ寝るね」 「うん、僕はまだお父さんと話さないといけないけど、おやすみ」 そう言って二階建ての家の横にある小さな家の玄関前で僕たちは別れる。 そのタイミングで敷地の中に突然、人が現れた。スーツ姿のメガネをかけた男性。年齢は20代後半くらいだろうか。 「君が──例の河野くんだね?」 男性は僕の目の前まで歩いてきて穏やかな声で聞いてきた。 「はい、河野悟です」 「本来ね、生身の人間である君がここに来るのは異常な事態であることなのは分かるね?」 僕は返す言葉が見つからない。確かにここに居るべき存在じゃない。でも、向こうの世界にも僕の居場所はない。 「君を転移で元の世界の大人に引き渡すこともできる」  でも、そう言って男性は僕に微笑んで、 「娘がね、電話で嬉しそうに君の話をしてきたんだ」  男性は人差し指を立てて僕の方を真っ直ぐ見る。 「条件がある、1年間だけなら滞在していい。ここは君の世界と時間の流れが違うから影響は出ないと思う」 それともう一つと言って指をもう一本立てる 「君自身になにかあった時は、1年経っていなくても帰す。いいかい?」  もちろん今、帰りたければ送る。そう言われた。 ──僕はもう少し彼女と過ごしてみたかった、それが、1年間の夢だとしても。 「──分かりました、1年間よろしくお願いします!」 男性はうなづくき、僕に背を向けると隣の家に歩き出す。その途中でなにか気づいたようで、こちらに振り返って 「君、学校は娘と同じ学校に転校生として入れるようにしておくから」 「居候だと色々とまずいからね、まあその辺の辻褄合わせはまかせて」 そう言って家の中に入っていった。僕も小さな家に入る。そこは8畳くらいの部屋だった。ベットに机と椅子、本棚があるシンプルな部屋。 僕は疲れた身体をベットにゆだねて眠った。
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