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プロローグ
──僕、河野悟は中3の秋に、帰る場所を失った。
親は元々多額の借金を抱えていた。うちには毎日、借金の取り立て屋が来て、母に詰め寄って、金を払わせようとする──。
正直、家庭は限界だったんだと思う。父は母を置いてどこかへ逃げ、母も後を追うように僕を置いてアパートからいなくなった。
大家にも相談したが、家賃の滞納が酷いのでどのみち退去させるつもりだったらしい。
──どうしたものか、夜の街をふらふらしてたら警察とかが保護してくれるんだろうか。
僕はあてもなく夜の街中を歩く、全てを失ったという感覚が街の明るい光とは反対に僕の心を暗くする・・・・
街の路地裏に入り冷たいコンクリートの地面に座り込む。体力がそこを尽きていた。冬が近くなってきた夜の街は制服では寒すぎた─。
──寒いし、お腹もすいた。このまま路地裏で死ぬんだろうか・・・・なんか泣ける。凄く寂しい最後だな。
僕は涙を流して、しきりに痛む心を包むように膝をかかえてうずくまる。 誰かが見つけてくれることを祈りながら
──その時、路地裏で誰かが近づいてくる音がする。その音はうずくまって座っている僕の前で止まった。
「転移に失敗して路地裏に出たら、わたしと同じくらいの男の子が捨てられている」
顔を上げると、そこにはつやのある黒い髪のショートヘアにパッチリとした大きな目。とても整った顔立ちをしている少女。背丈や制服からして高校生に見える。
「あなたは誰ですか、高校生がこんなところに」
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